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吸引って採血と同じ位…それ以上?とにかく子どもにとっては痛くて苦しい嫌な処置ですよね
そして、それを見ている親御さんも辛いはずです
苦痛を伴う処置なので、吸引のプレパレーションで悩む看護師さんも多いと思います
そこで、吸引時の声かけや家族への配慮について考えていきたいと思います
正しいアセスメント・正しい手技が何よりも大切なんです
きっと皆さんが困っている「嫌がる患児へどう説明するか…。」については後に考えていきますが、何よりも、子どもにとっていっっちばん大切な事は、
「正しくアセスメントをして、必要な時に、適切な手技で、安全安楽に処置を行い、児への苦痛を最小限にする事」だと思います
最近は減ってきたのかな…と感じますが、時間で吸引を行う病院や施設なんかもありました。
吸引って、粘膜を傷つけてしまったり、無気肺を起こしてしまったり、呼吸状態が悪化してしまうかもしれない、…結構リスクのある処置ですよね⁉
なので、資格を持っているプロフェッショナルとして、肺音や酸素飽和度などの呼吸状態を、患者さんの全体像も含めて適切にアセスメントしてほしいのです
看護師として長年経験を積んでいくと、吸引の手技についてわざわざ参考書を読むことってあまりないと思います。でも、日々医療は進歩していて、エビデンスや手技も変わってきますので、最新の情報や技術を取り入れる姿勢も大切ですね
あと、あと、皆さん!!
自分の鼻に吸引チューブを入れた(入れられた)ことはありますか?
ない人は、明日5Frでいいので、一度入れてみてください。笑
きっと怖くって、そーっと入れる…もしくは痛くて入れられないと思います。でもでも、思い出して!子どもの鼻にはガッツガツ入れていませんか?
あんな細いチューブなのに、大人の鼻でもめちゃめちゃ痛いですよね
忙しい時こそ、ルーチンワークにならず、子どもの立場にたって、丁寧に処置を行ってほしいな、とおなすは願っております
年齢別 カテーテルの太さと吸引圧、挿入の長さ
吸引カテーテル | 吸引圧 | カテーテルの長さ | |
新生児 | 6~7Fr | 90mmHg | 8~10cm |
乳幼児 | 7~10Fr | 100~200mmHg | 10~14cm |
学童 | 10~12Fr | 200~300mmHg | 14~16cm |
吸引圧は痰の粘稠度に応じて変化させます。
もし、分からなくなってしまったら吸引チューブの挿入の長さは、子どもの「鼻先~耳までの長さ」を参考にしましょう。
吸引時の看護のコツ
※ここではコツやポイントしか書いていませんので、基本的な吸引の手技や方法については、参考書などを読んでくださいね
- 実施前に声掛けや吸引を行うことを伝え、どうしたら頑張れるか、できるだけ意見を尊重する(できたねシールなど含め)
- 子どもの吸引は、吸引の刺激でおう吐してしまう事もあるので、空腹時に行う方が良い(酸素飽和度が低下しているなど緊急時は別です)
- 暴れてしまう事も多いので、なるべく2人(実施者と抑えの看護師か家族)で行う
- 小児の吸引では抑えも重要になるので、暴れてしまって危険な時は身体と腕をバスタオルなどで巻き付けて抑制し、頭部後屈顎先挙上(バスタオルを肩枕替わりに入れる)でチューブが挿入しやすい体位を取る
- 抑える際はできるだけ馬乗りにならない様にし、「そのまま動かないでね」「上手だよ」など、現状を伝えたり、頑張りを称賛する
- 痰の粘稠度が高い時は、飲水を勧めたり、輸液の量を医師と相談する
- 児の咳嗽から感染しない様にマスクやガウンだけでなく、ゴーグルも装着するなどPPEを徹底する
子どもへの説明
さて、おなすや皆さんが頭を悩ませている部分
子どもへの説明≒プレパレーションの部分ですね。
でも、ちょっと待って!よくよく考えると吸引を行う対象って、RSウイルスだったり、0~3歳位までの、結構小さい子が多くないですか?
ある程度の年齢になると、相当呼吸状態が悪くない限りは、体位ドレナージやスクウィージングなどの肺理学療法でなるべく痰を自己喀出できる様に促していくケアが主流になってきますよね
という事なので、上記でも述べたように、あまりプレパレーションや説明にばかり気を取られすぎず、その児にとっての適切な吸引の手技+処置中に安全に抑える事が大切だと考えています
とは言いながらも、辛い処置なので、説明も軽視してほしくない部分でもあります(どっちなんじゃい笑)という事で、次項では具体的な声かけについて考えてみます
年齢別 具体的な声かけの例
まず大切な事は、当たり前ですが成長発達段階+その児の理解度をよく把握しておく事です
通常2歳半頃から行う事が多いプレパレーションですが、1才も過ぎれば、看護師2人で訪室して、エプロンに手袋、マスクやゴーグルの格好でいたら、1度でも吸引経験がある児は「はっ!まさか、このパターンは、あの鼻からの痛いやつ、またやられるんじゃ!」って泣き出すと思います。なので、1歳代から説明を行っていきましょう。
【1歳代】
人形やジェスチャーで胸を指し「ここにバイ菌さんがいるから、バイバイするね」などと声をかけ、吸引中はしっかりと顔や身体を抑えます。(できれば馬乗りにならずに)
終わったら速やかに坐位にしてあげて、呼吸を整えることを見守りながら「もう終わったよ。頑張ったね」と伝えてあげて下さい⇒上体を起こすのは、寝かされるのが怖いと感じる児が多い+終わったというサイン+吸引後の咳嗽でおう吐する事もあるため
【2歳代】
大体2歳後半のお子さんは吸引=痛い・怖いものだと連想でき、理解力のある児なら、吸引の必要性も理解できているでしょう
「痛いけど、終わったら呼吸が楽になるから、怖いけど仕方ない」と感じている子もいるかもしれません
この年代のお子さんには、その子の身体や人形を使って、「お胸にばい菌がいっぱいあって、○○ちゃんが苦しいから、看護師さんがばい菌を取るね。ちょっと痛いんだけど、泣いてもいいからじっと我慢してくれたら、看護師さんもばい菌やっつけやすいんだ!ママと一緒だったら頑張れるかな?動くともっと痛いから、お寿司巻き巻きにして、お顔はママか看護師さんがそーっと抑えるね」など、
吸引の必要性、方法、協力してほしい事、どうやったら頑張れるか選択してもらう様な関わりをしていきましょう
もし、本人がもっと具体的な説明を必要としている時は、
「赤ちゃんに使う小さーい(細い)のでするね」とチューブを実際に見せたり、人形を使って、一連の流れを見せてあげましょう
特に自宅でも吸引が必要な慢性疾患の児などは、頑張ったシールなどを利用したり、これを頑張ったらおやつの時間!など、先の楽しみを提示してあげたり、家族と相談しながらその児が一番頑張れる説明や乗り切るためのグッズなども用意しても良いでしょう
【3歳以降】
3歳以上になれば、ほとんどのお子さんが必要性を理解できる年齢だと思います
嫌々泣いていても、耳ではちゃんと説明を聞いているので、
今○○ちゃんはどういう状態
⇒だから吸引が必要
⇒吸引の具体的な方法と、協力の依頼など、
これから何が行われるのか、予測がつき易い様に(10数えたら終わり)伝えてあげる事です
吸引の必要性を、ご家族にも説明しましょう
吸引に関してネックになってくるのが、吸引を過度に拒否する親御さんの存在です
皆さんも勤務していると、「コレ(吸引)ってやらなきゃダメですか?」「この子は吸引が苦手なので、やらないでください」などと言われたことはありませんか?
「いやいや、必要だからやるんですよー。」って気持ちはグッと飲み込んで…。
確かに、泣きわめき、苦しみ、時には鼻血を出しながら処置されているわが子を見て…辞めてほしい。という親御さんの気持ち、自身が親になってみて本当によくわかります
親御さんに吸引の必要性をきちんと理解してもらう事が必要となってくるわけですね
そのためには、子どもに吸引の必要性を説明するときは、ご家族にも一緒に参加してもらい、吸引前後の酸素飽和度の変化を一緒に見たり、肺音を一緒に聴取して、数値や音で吸引の効果を実感してもらうとよいです
看護師の声かけも「じゃ、吸引しますねー。お母さん外で待っててくださいー。」と、一方的だと、家族は強制的に外に出され、終了後にはわが子は泣き叫び機嫌も悪い…という状況になり、吸引は直接効果が見えづらい事も多く、クレームにもつながりかねません
ここは吸引の必要性を理解してもらったうえで、「○○ちゃん、ママと一緒だと頑張れる?」「ママかパパに応援してもらう?」など、子どもに頑張れる方法を選択してもらい、家族と一緒の方が頑張れるなら、一緒に参加してもらいっても良いでしょう
一緒に参加&協力してもらった方が、処置で何をされているのかクリアになりますし、ご家族もケアに参加してもらう事で、看護師と一緒の方向を向いて頑張っているという一体感が生まれやすいと思います
ただし、「医療的な処置や我が子のがかわいそうな姿は見れない」
「辛い処置なのに助けてくれなかったという感情を抱かせたくない」という方もいるので、
強制にはしない方がいいでしょう。ご家族の希望を聴取してくださいね。
今回は吸引時の看護のコツや説明について書きました。参考になりましたでしょうか?
皆さんの看護のコツや質問なども受け付けております♡
吸引はとっても痛くて辛い処置です。そのお子さん、そのご家族に寄り添って、一緒に頑張っていけるといいですね☆